今の世の中多くの人が利用しているSNS。そのほとんどは匿名によるプライベートでの利用にとどまっています。特に日本では海外と比べても実名での利用の割合は少ないと言われてます。
ですがSNSはビジネスにおいて有効なツールであり、それには実名で発信することが好ましいとのこと。更に発信がバズらなくてもいいし、必要以上に炎上を恐れる必要もない。
著名人でもインフルエンサーでもない、ごく普通のビジネスパーソンのためのSNSの使い方を紹介しています。
書籍情報
【書籍名】『自分の名前で仕事がひろがる「普通」の人のためのSNSの教科書』
【著者名】徳力基彦
【出版社】朝日新聞出版社
著者について
著者の徳力基彦さんは新卒で誰もが知る大企業のNTTに入社。法人営業やIRを担当しますがIT系のコンサルティング会社に転職。ですが1年あまりでアリエル・ネットワークというソフトウェアのベンチャー企業に再度転職しました。
2006年にアジャイルメディアネットワークでブロガーとして運営に参加。代表取締役社長や取締役CMOを歴任し、退任後はアンバサダーとしてソーシャルメディアの企業活用の啓蒙活動を担当しています。
note株式会社ではプロデューサーとしてビジネスパーソンや企業でのブログやソーシャルメディアの活用についてサポートを行っています。
他にも東洋経済オンラインや日経MJ、宣伝会議などでも活躍されています。
ビジネスパーソンこそ実名でSNS発信するべき
SNSを利用するほとんどの人は匿名でプライベートに限定して発信しています。
ビジネスパーソンが実名で発信することは少なく、その理由は組織がSNSの利用を禁じていたり、推奨していなかったりすることも。
また炎上して組織に迷惑をかけまいと自ら利用を避けているケースもあります。
ですが著者は組織に属するビジネスパーソンこそ実名で発信するべきと説きます。
しかし、ぼくはあえてこう言いたいのです。
SNS発信は、仕事の役に立つ。
組織に属するビジネスパーソンこそ発信しないともったいない、と。
3ページより引用
新型コロナが蔓延してからはリアルのコミュニケーションにはどうしても限界があります。
これからの世の中ではビジネスシーンにおいてもSNSの存在が更に大きくなり、だからこそ実名でのネットコミュニケーションが必須となっていくと唱えます。
SNSを上手に活用することでビジネスに役立ち、更にはキャリアアップにもつなげることもできるとのこと。
プルのコミュニケーションがハプニングを生み出す
実際に会ったり電話を掛けたりするプッシュのコミュニケーションに対して、SNSやブログでの発信は相手から情報を求めにやってくるプルのコミュニケーションであるとしてその有効性を解説しています。
インターネットが普及する以前は、ややもすれば押しつけがましくなりがちなプッシュのコミュニケーションが主流でしたが、今の時代では繋がりを一から作る場合この手段は敬遠されがちです。
個人の資質の面もありますが、若い人ほどこの傾向は強いのでは。
その点プルのコミュニケーションならば本当にその情報が欲しい人が向こうからやってくるのですから、スマートで合理的ともいえるでしょう。
そのようなプルのコミュニケーションでは、SNSを通じていなければまず出会えなかったような人が向こうからやってくるケースも。
それを著者は「ハプニング」と言いSNSの可能性を主張しています。
自分の発信から相手を引き寄せ、プルのコミュニケーションを生み出す工夫として、発信内容を上手くズラすコツも紹介されています。
リアルとネットを分けずにアウトプット・ファースト
発信についての心構えやSNSにつきものの炎上にも触れています。
発信内容がバズらなくてはいけないとか、炎上を恐れたりと発信のハードルを自分で上げてしまっていることが、実名での発信が普及していない要因となっています。
著者がポイントとしているのは、実名で発信するにはリアルとネットを分けないことを意識し、対面では言わないような内容はSNSでも発信しないこと。この主張には納得しかありません。
確かにそのような心掛けをしていれば炎上を招くリスクを下げられますし、ネットでの発信内容とリアルの自分に乖離が生じてしまうとビジネスパーソンとして信用問題にも発展しかねず好ましくないのは明白です。
人間は本来臆病な生き物です。ですがリアルでは決して口にしない内容も、匿名では個人を特定されない安心感からか、容易にあるいは無意識に過激なことを発信してしまいます。
万が一自分の不注意で炎上した場合、変に言い訳をせず素直に謝ることで被害を最小限に抑えられるのは政治家や芸能人の不祥事の際の対応と共通しています。
バズを狙ってわざと炎上する手法はしばしばインフルエンサーに見られる手法ですが、所属する組織に迷惑が掛かるビジネスパーソンは勿論、個人でも真似しないのが賢明と言えます。
むしろせっかくの発信に反応がなくてもがっかりする必要はありません。
自分のためのメモであると思えば期待値を下げられ、発信の継続が容易になると説きます。
「アウトプット・ファースト」を心掛けることが肝要。その際鋭さや、過激さは必要はないとのことです。
SNS発信を継続して大きな成果を得る
発信を継続していく行為はその人の信頼や評価を積み重ねていきます。
それらの信頼や評価は新たな世界に導いてくれます。
社外での評価は発信者自身だけでなく、所属する組織にも恩恵をもたらします。そうなれば出世の道が開けるだけでなく、組織にしがみつく必要もなくなります。
新たなコミュニケーション手段を持ち、ひとつの組織に依存しているリスクから脱却すること、それができると副業や転職で有利になるだけでなく、今の仕事でも物事がうまく運ぶようになる。
それがSNSを活用する目的だという論旨に目を開かせられるビジネスパーソンは多いと思われます。
この世の多くの組織人が望むことですよね。そんな理想を実現するためにビジネスパーソンは実名でSNS発信を継続しようと著者は提唱しています。
いままでプライベート限定で使っていたり、ビジネスにおいてもどのようなスタンスで用いていいかわかわず漠然と発信していた人は多いのではないでしょうか。
本書はそんな人に向けて、キャリアアップに繋げるためにはどのようにSNSに向き合い活用すべきかを教示してくれる一冊です。