『1917 命をかけた伝令』ネタバレと感想

1917命をかけた伝令

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『1917 命をかけた伝令』は第一次世界大戦を舞台にしたあるイギリス軍兵士をワンカット風映像で追った異色の戦争映画です。

2020年のアカデミー賞では作品賞、監督賞などをはじめ10部門でノミネートされ、撮影賞、視覚効果賞、録音賞の3部門を受賞しました。作品賞は『パラサイト 半地下の家族』に譲りましたが、ワンカット映像としきりに宣伝していたとおり見事な映像でしたので、撮影賞を取ったことは当然の結果といえました。

アカデミー賞を占う位置づけのゴールデングローブ賞では作品賞と監督賞を勝ち取っています。

また英国アカデミー賞では最多の7冠を達成しました。

 

『1917 命をかけた伝令』作品情報

【原題】
『1917』

【監督】
サム・メンデス

【出演】
ウィリアム・スコフィールド – ジョージ・マッケイ
トム・ブレイク – ディーン=チャールズ・チャップマン
スミス大尉 – マーク・ストロング
レスリー中尉 – アンドリュー・スコット
エリンモア将軍 – コリン・ファース
マッケンジー大佐 – ベネディクト・カンバーバッチ
ジョセフ・ブレイク中尉 – リチャード・マッデン

監督は『アメリカン・ビューティー』、『007 スカイフォール』のサム・メンデス。ワンカット風撮影を見事に成し遂げたのは『ブレードランナー 2049』のロジャー・ディーキンス。

『英国王のスピーチ』、『裏切りのサーカス』のコリン・ファース、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』やこちらも『裏切りのサーカス』に出演したベネディクト・カンバーバッチの名前も見られます。

(C)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.

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『1917 命をかけた伝令』のネタバレと感想

時は1917年。物語の舞台は第一次世界大戦での西部戦線です。イギリス、フランスをはじめとする連合軍とドイツの戦いです。

機関銃、戦車、飛行機、潜水艦など近代兵器の開発によりそれまでの戦争とは様相が一変したのが第一次世界大戦です。軍事技術の革新は大量殺戮を可能にしました。

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シンプルなストーリー

タイトルどおりのストーリーは至ってシンプルです。二人の若い兵士、ウィリアム・スコフィールドとトム・ブレイクが前線にいる味方に攻撃中止の命令を伝えるという内容。

敵のドイツ軍は撤退しているがそれは罠であり、追撃すれば待ち構えている敵に迎撃され1600名の命が危険に晒され危険があります。慎重なスコフィールドにとは対照的にブレイクは兄が追撃軍にいるため、危険も顧みず先を急ごうとします。

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初めどちらかと言えばブレイクの方を主人公に見せかけて話しが進展しますが、前半で助けようとした敵のパイロットによって殺されてしまいます。

ブレイクを失ったスコフィールドは途中で進軍中の味方にトラックに乗せてもらったり、フランス人の女性と出会い食料を分け与えたりして味方の陣地を目指します。時には敵のスナイパーに狙われますが、なんとか命令を伝えることに成功します。

この作品全体を通じて言えることですが、センチメンタリズムは意図的に排除されており、感情描写は必要最低限に抑えられています。

ワンカット風映像がもたらす一体感

『1917 命をかけた伝令』はワンカット撮影と宣伝されていますが、もちろんすべての映像がワンカットで撮られたわけではありません。観ている側には気づかせないような巧妙で見事な職人芸により、ワンカットで撮ったような映像に仕上げられています。

大変な苦労があったと思われますが、撮影監督のロジャー・ディーキンスは観客にカメラを意識させず全部簡単そうに思ってほしいとのこと。映像制作者としての矜持が感じられます。

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サム・メンデス監督はインタビューで今回の撮影方法を選択した理由について、リアルタイムで主人公の息遣いまで描くためと答えていました。

ワンカット風の映像で進行していくため、当然のことながら登場人物が移動するとそれに伴ってカメラの視点もどんどん動いていきます。厳密には違いますが映像が一人称の視点で展開されるため、観客は登場人物と一緒に移動しているような感覚になります。

映画は草原をバックにスコフィールドたちが昼寝をしているシーンから始まります。そこから上官に呼ばれ命令を受けに塹壕を進み、やがて泥沼の戦場に張り巡らされたバリケートを掻い潜って進んでいきます。映像の切り換え無しで,草原ののどかな雰囲気からいつの間にか緊迫感溢れる最前線へ移り変わる様はワンカット映像ならではの効果です。

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連続した映像を見続けていると、次の瞬間に何が起きるかわからない緊張感を登場人物と共有しているように感じます。もちろん実際の戦場とは全く比べ物になりませんが、それでも目に見えない敵から狙撃されるシーンではその恐怖感が自身に降りかかるように伝わってきます。

ワンカットのデメリットとして視点が必ず連続しています。そのため回想シーンや同時刻での他の場所の状況を挟み込むことができません。よってややもするとワンカット映像は単調になりがちですが、そのことが却って観客を画面に没入させる要素となっています。

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劇中のコントラスト

ワンカット映像の単調さを補う役割をしているのが、劇中にいくつも登場する様々なコントラストです。

わかりやすいのが狭い塹壕から飛び出した瞬間に視界に入る広々とした大地。閉ざされた空間から突然開けた世界に飛び込んだような変わりざまは、観る者を十分に刺激します。

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他にもいたるところにコントラストとなる要素が散りばめられています。泥だらけの大地と草原。夜の闇と砲撃による閃光。戦地の真っただ中で出会った非戦闘員の女性と赤ん坊。森の中で静かに歌を聴いていた部隊が直後に進軍し戦闘準備。戦場のシーンではその悲惨さを写実的な映像で見せつけると思えば、森の中のシーンでは幻想的な雰囲気を醸し出します。

中でも突撃する部隊の兵士達とそれを横切って走るスコフィールドは印象的でした。これらのコントラストが作品に起伏や彩りを与えています。

まとめ

『1917 命をかけた伝令』で描かれているのは、第一次世界大戦での有名なエピソードでも、ターニングポイントになるような出来事でもありません。戦争という大きな枠組みから見たら人々の記憶にも残らないような、名も無き兵士のほんとに小さな任務のひとつでしかありません。

伝令を伝えた上官からは次には攻撃開始の命令が下るとつぶやきます。それはスコフィールドが仲間を失いながら、自らも命からがらやっとの思いで伝えたことをあっけなくひっくり返すことになります。

戦争とはそんな虚しさを積み重ねたものなのかもしれません。

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