『ロッキーvsドラゴ:ROCKY Ⅳ』ネタバレと感想

ロッキーvsドラゴROCKYⅣ

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シルベスター・スタローン主演ロッキーシリーズ4作目「ロッキー4/炎の友情」がスタローンの手で再編集され『ロッキーvsドラゴ:ROCKY Ⅳ』として生まれ変わりました。スタローン自身オリジナル版には納得がいってなかったとインタビューで発言しています。そしてあの頃の自分は薄っぺらだったとも。その言葉のとおり本作はオリジナル版と比べ人間ドラマをより前面に出した作りに仕上がっています。

ロッキーvsドラゴROCKYⅣ

(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

『ロッキーvsドラゴ:ROCKY Ⅳ』作品情報

【原題】
『ROCKY Ⅳ:Rocky vs Drago』

【監督】
シルベスター・スタローン

【出演】
ロッキー・バルボア:シルベスター・スタローン
エイドリアン:タリア・シャイア
アポロ・クリード:カール・ウェザース
ポーリー:バート・ヤング
イワン・ドラゴ:ドルフ・ラングレン
ルドミラ:ブリジット・ニールセン

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『ロッキーvsドラゴ:ROCKY Ⅳ』のネタバレと感想

アポロの協力もあってクラバー・ラングを倒したロッキーの前にソ連からイワン・ドラゴが現れ挑戦を挑みます。ロッキーの代わりにアポロがドラゴとの対戦を希望。アポロは引退から5年経っており、ロッキーやエイドリアンは一旦は引き止めましたが、世間から忘れられることを恐れたアポロは戦士としての自分は変えられないとリングに立つことに。ジェームス・ブラウンが歌う中アポロが登場します。アポロ対ドラゴの試合はエキシビジョンマッチでしたが、ドラゴの異常なまでの強さの前にアポロは無惨にKOされ帰らぬ人となります。アポロの葬式で感情が抑えられないロッキー。

ロッキーはドラゴと戦うことを決意しますが、アメリカでは公平な試合ができないとドラゴ陣営は帰国します。コミッショナーに直談判しに行きますが、ソ連での試合は認可されずタイトルも返上することになりました。エイドリアンも試合に反対しますが、ロッキーはポーリー、トレーナーのデュークと共にソ連に渡ります。

ロッキーvsドラゴROCKYⅣ

(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

雪に囲まれた山小屋でロッキーはトレーニングを開始します。スパーリングパートナーもいない環境で原始的なトレーニングに精を出すロッキー。一方ドラゴは最新の技術に基づく科学的なトレーニングで肉体を追い込んでいきます。そんな中エイドリアンがロッキーを追ってソ連までやってきました。

試合はクリスマスの日でした。会場はドラゴコール一色でロッキーにはブーイングが飛びます。試合会場にはソ連政府の首脳陣も来場していました。試合は体格に勝るドラゴ有利で進みますが、いくら打たれダウンを奪われてもロッキーは怯みません。ドラゴはそんなロッキーの姿を見て人間ではないと驚きます。

ラウンドが進むにつれてロッキーのパンチが当たりだします。試合は互角の打ち合いとなり、それを見ていた観客はやがてロッキーに声援を送り始めます。それに焦った政府高官がドラゴを罵倒しますが、ドラゴは自分のために戦うと言い放ちます。やがて最終15ラウンドを迎えました。ロッキーは渾身のパンチを何度も浴びせ、とうとうドラゴをKOしました。

試合後に「俺が変わったように誰でも変われる」とスピーチします。トレーナーと共にリングを後にしました。

ロッキーvsドラゴROCKYⅣ

(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

スタローンのキャリアの分岐点

不遇の若手時代を送ったスタローンは76年公開の『ロッキー』で一気にスターの座を獲得しました。その後もロッキーは続編が制作され『ランボー』シリーズと共にスタローンの代表作として知られます。

80年代は娯楽路線の大作が次々と封切られた時代で、ロッキーシリーズもその例に漏れず前作『ロッキー3』からその傾向が見られました。『ロッキー4/炎の友情』はより一層エンタメ色が濃厚になっています。更には当時は米ソの冷戦がいまだ続いており、本作もその政治的背景を当て嵌められています。

公開当時、本作は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』、『ランボー/怒りの脱出』に続き85年全米第3位の興行収入を記録するなどシリーズ最高のヒットとなりました。そんな興行的成功とは裏腹に作品の評価は思わしくなく、ゴールデンラズベリー賞では『ランボー/怒りの脱出』と併せて8部門でノミネートされ、そのうち5部門で受賞してしまいます。

これ以降2000年代に至るまでスタローンはラジー賞の常連となってしまいました。決して見られないような駄作ばかりというわけでもないのですが90年代はキャリアも下降線をたどります。そういった意味で本作は『ランボー/怒りの脱出』とともにスタローンのキャリアの分岐点となった作品といえます。

ロッキーvsドラゴROCKYⅣ

(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

再編集によるニュアンスの変化

オリジナルは91分の長さでしたが、スタローン自身の手で削るべきシーンをカットし42分のフッテージ素材を追加、94分の作品として再構築しました。

大味なオリジナル版と比べてエンタメ要素を削除した結果、ドラマ性が増した印象です。まず冒頭の『ロッキー3』の回想シーンが大幅に追加されました。オリジナル版ではグラバーとの試合シーンが中心でしたがそこにアポロとのトレーニングを追加し二人の関係性を強調しています。

更にエイドリアンの出演シーンを増やしたことでロッキーやアポロのリングに掛ける心理を丁寧に描写しています。オリジナルにもあったエイドリアンがソビエトまでロッキーを追いかけてくるシーンにもより重みが加わりました。

ちょっとした編集の違いですがオリジナルではロッキーがタオルを投入するのを一瞬ためらった直後にアポロがドラゴにKOされましたが、本作ではそのシーンがカットされタオルを投げようとしたタイミングでKOされたことになっています。ほんの数秒のシーンを削ったことでニュアンスがかわったことは注目に値します。

アポロの葬式のシーンではトレーナーのに続いてロッキーが弔辞を読みますが、本作では泣き崩れながらアポロへの想いを語ります。ロッキーが最も感情を露わにしたシーンとなっています。

ロッキーvsドラゴROCKYⅣ

(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

再編集において最も顕著なのはお手伝いロボットの出演シーンをすべてカットしたことでしょう。これによりオリジナル版に見られた中弛みした印象は一気に無くなりました。

ブリジット・ニールセンが演じるルドミラの出演シーンも少なくなっていました。ドラゴの妻という存在を薄めた代わりにソ連側のスポークスマン的な役割りを政府高官のニコライがほぼ担っています。これにより国家間の対立という図式をより鮮明に浮かび上がらせています。

因みにロッキーがドラゴと試合を行うためにコミッショナーと話し合いをするシーンはオリジナルには無くまるまる追加されています。

『クリード 炎の宿敵』への繋がりがよりスムーズに

血の通わない殺人マシーンのようなドラゴですが、本作では短いながらもセリフが増えたことで人間的な要素が肉付けされています。このことにより本作の後日譚となっている『クリード 炎の宿敵』で息子を伴いリベンジにやってくるドラゴのキャラクター設定にも深みを与えています。

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2019-01-25
ロッキーvsドラゴROCKYⅣ

(C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

現在の世界情勢へのメッセージとも受け取れる

試合後の政府高官の振る舞いも変更されています。オリジナル版では観衆と同じく勝利したロッキーに拍手を送ります。国と国では対立しているが正々堂々と戦った相手には敬意を表し讃えるといった大団円でした。

ですが本作では憮然とした表情で背を向けて立ち去ります。スポーツは国境を超えるといったようなキレイごとで終わらせなかった本作は、図らずもロシアを取り巻く現在の世界情勢を連想させられます。

まとめ

残されたフッテージ素材でやれることが限られている条件の中、ここまで作品のクオリティを上げたスタローンの手腕は見事です。いかにも80年代風の大味な雰囲気のオリジナル版から無駄な贅肉を削ぎ落したことで、重厚でシリアスな仕上がりにアップデートされました。もうオリジナル版は見る気がしなくなりました。

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