『バニラ・スカイ』以来約9年ぶりの共演となるトム・クルーズとキャメロン・ディアス。2010年の作品です。
2人のビッグスターのどちらのメンツも立てた内容はお見事!脚本には12人以上が関わったそうですが、最終的にクレジットされたのはパトリック・オニールただひとり。
興行的にはイマイチ振るわなかったそうですが、なかなか楽しめる作品となっています。
『ナイト&デイ』作品情報
【原題】
『Knight and Day』
【監督】
ジェームズ・マンゴールド
【出演】
ロイ・ミラー – トム・クルーズ
ジューン・ヘイヴンス – キャメロン・ディアス
ジョン・フィッツジェラルド – ピーター・サースガード
イザベル・ジョージ長官 – ヴィオラ・デイヴィス
サイモン・フェック – ポール・ダノ
アントニオ・キンターナ – ジョルディ・モリャ
ロドニー – マーク・ブルカス
監督は『3時10分、決断のとき』、『フォード&フェラーリ』のジェームズ・マンゴールド。スタローン主演の『コップランド』も手掛けています。
『ナイト&デイ』のネタバレと感想
単に二人のスターを見せただけの作品ではなく、アクションとラブコメを上手い具合にミックスさせています。と同時にアクションはどうしてもB級感がでてしまい、ラブコメにしてはこってりとはいかず中途半端な感じになっています。
ですが、だからこそ男女ともに受け売れられる匙加減になっているとも言えます。
大まかな傾向として男性は甘ったるい恋愛モノは苦手だし、女性はアクションはちょっとという人が多いと考えれば、ある意味カップル向きの作品。
大昔に流行ったスクリューボールコメディの現代版といっても良い内容で、トム・クルーズ演じたロイの役は戦前ならケーリー・グラントあたりが適役かも。スマートでイケメン、やることなすこと全てにおいてそつがない。キャラクター設定がはっきりしています。
一方のジューンはどこかマイペースで能天気だが、やや思い込みが強い女性でロマンティックコメディの主人公の性格をきっちりと持っている。
少々キツイことを言うと、ラブコメにしてはお二人とも少々お歳を召していらして、サービスショットのつもりか度々入る笑顔のアップは何とも言えません。特にジューンの笑顔にはちょっと痛々しさも感じてしまいます。若作りした演技なんですね。
あらすじとしては「ゼファー」という永久にエネルギーを生み出す電池をめぐって、CIAと武器商人から狙われるロイの騒動にジューンが巻き込まれるお話です。お宝を手に入れるために敵と争奪戦を繰り広げるのは、古典的な映画のプロットです。そこにラブコメの要素を組み込んだところにこの作品の特徴があります。
古典的といえばジューンの周りの人物、妹や男友達のロドニーが少々ズレていたり、噛み合っていないのはコメディの常套的なキャラクター設定です。またジューンがロイから度々飲まされる睡眠薬や、敵に打たれた自白剤は古臭ささえ感じられます。
ただし睡眠薬を飲まされ、いきなり南の島のビーチやアルプスの列車に乗っている場面に切り替わることは、説明的で余計なシーンが増え作品全体が冗長にならない効果を生み出しています。
話の筋の辻褄は二の次で、そのことを問い詰めるような作品ではありません。
もっと言えば主人公は絶対死なないことを前提としています。銃撃戦の最中でもジューンが不満を口にすれば、ロイはあきれた表情で弾丸が飛んでくる中に身を晒してジューンに近づきキスをします。
リアルな描写ではなく、娯楽性と話の展開を優先しているのです。
CIAは多くの映画で悪者や主人公と対立する側として描かれており、この作品でも例外ではありません。CIAは基本的に嫌われ者という感覚は、FBIとCIAの区別もろくすっぽできていない日本人には中々イメージしにくいところです。
クレジットではトム・クルーズが先になっていますが、本作はジューンであるキャメロンの視点で描かれています。ターゲットとする客層として男女両方を狙ったことを考えればこれは正解です。
男性客はジューンの視点から描かれていても、アクションというわかりやすい要素を中心に観るのでさほど違和感は感じません。ですが女性客からすればジューンの気持ちを常に意識した見方になるので、ロイの視点にしてしまうとラブコメとして成立しなくなります。
何かと常にイニシアティブを取っていたのはロイですが、ラストシーンではジューンが逆転します。でもってハッピーエンドなところも古典的といえば古典的です。
まとめ
トム・クルーズもキャメロン・ディアスも楽しそうに演じている本作は見ている側も肩ひじ張らずにリラックスして楽しめる内容です。
残酷な描写や濃厚なラブシーンもないので幅広い客層に受け入れられると同時に、コアな内容を求めるファンから支持されないことと背中合わせなのは仕方ないことです。
『ナイト&デイ』はAmazonプライムビデオで鑑賞できます。