『努力不要論』中野信子著

努力したら負け

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本屋で刺激的なタイトルが目に入り思わず手に取った一冊です。表紙には「努力は報われない。では、結局は才能?」という場合によっては読者を全否定しかねないような、身も蓋もない一文も気になりました。

本書では脳科学者の中野信子さんが世間で常識的に努力と思われている内容について、今一度認識を改める必要があることを提唱しています。ですが脳科学者の立場から努力が不要であることを解き明かした内容ではありません。

書籍情報

【書籍名】『努力不要論』

【著者名】中野信子

【出版社】フォレスト出版

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著者について

著者の中野信子さんは東京大学工学部卒業後、東京大学大学院を修了。その後フランスの研究所に勤務、横浜市立大学客員准教授を経て現在は東日本国際大学特任教授に就任。脳科学者、医学博士として活躍されています。また高IQ団体であるメンサの会員でもあります。テレビ番組にもよく出演されていますので、ご存知の方も多いかと思います。

日本人にとって努力することは野暮だった

本書では努力を全否定しているわけではありません。間違った努力、無駄な努力をしても結果は伴いませんよと述べています。努力をすれば報われると信じてガムシャラになっているような人を努力教の信者と例えています。

努力教の努力信仰というのは、結果が出るか出ないかわからない、あるいは、出ないとわかっているのに、努力すればなんとかなるのではないかと、理不尽な期待をする非合理的な精神のことです。
67ページより引用

日本人が一般的に努力を尊いものとするのは明治時代以降に広まった考え方で、それ以前の江戸時代では努力は粋ではなかったそうです。江戸時代の人たちは遊ぶことはプラスの概念で、糊口をしのぐ以外のことをできることが、高尚で粋とされ、必要に迫られた努力などは野暮でした。

努力が目的になってしまった努力中毒にならないために、時々自分を俯瞰してみる必要がありそうです。

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才能や素質で決まるのか

努力は報われるということばについて、半分は本当であると言います。なぜなら、あるパフォーマンスを高いレベルで実現するためには努力という負荷が必要で、それがないとそのレベルはどんどん低下していきます。

ではもう半分はウソなのでしょうか。わかりやすい例として元陸上選手である為末大さんの、アスリートで成功するにはアスリートになるための体で生まれたかどうかが重要という発言を紹介し、要するに持って生まれた才能、遺伝的な影響が必要と主張します。そしてそれは残念なことに学習や受験にもあてはまるそうです。ですがスポーツなどの身体的な素質と違い、学習的な能力は生まれつきの要素は小さく伸び代があるそうです。

そのためには報われる努力をする必要があります。

無駄な努力、報われない努力をしないために

著者は報われる努力をするにはどうしたらよいのかを提示してくれます。

真の努力というのは本来、成果を出すために必要な①目的を設定する、②戦略を立てる、③実行する、という3段階のプロセスを踏むことです。
41ページより引用

例えば受験でも正しい戦略を立て着実に時間を掛ければ誰でも東大にも合格できるとさえ説きます。

ですが世の中には目的に合った戦略を立てられず、報われないであろう努力をいつか良い結果が出ると信じて行っている人が少なからずいます。確かに日本人は我慢し苦労することが美徳とされ、その結果本来の目的が達せられなかったり、中途半端なかたちに終わったりしがちです。

報われる努力をする際に重要なことは目的を達成するために適切な戦略を立てることと説きます。逆にいうと目的に即していない戦略は無駄な努力となります。そのような無駄な努力には2パターンあり、ひとつは努力しているとはいえない状態であるにもかかわらず、努力していると思い込んでいる。もうひとつは努力の方向性が間違っている。どちらも自分では気付きにくいですね。

まとめ

著者は努力自体が不要と言っているわけではありません。本書は努力は報われるのではなく、報われる努力をするべきという内容です。

メンサの会員である著者だからこそ説得力があるような、また逆に言われたくないような。本のタイトルを鵜呑みにして読み進めると肩透かしを食らいます。

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2019-02-06

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